■ 書籍紹介
『テープ録音機物語』 阿部美春

 6月に秋葉原で開催された「アナログオーオーディオフェア」に行った折に、書籍売場で本書を見つけました。著者の『テープレコーダ』(日本放送出版協会 1969) は音響を志した頃の愛読書です。迷わずレジに持っていったら12,500円もしました。

 日本オーディオ協会発行の「JASジャーナル」に2004〜2012年に掛けて連載された同名記事の集録です。連載はさらに続く予定でしたが、残念なことに著者の逝去により中断されました。

 500頁を超える大冊で、欧米および日本の録音機や録音テープについて詳述されています。特筆されるのは図版の豊富さで、その多くは一次資料から引用したことが伺えます。ソ連に関する記載もあり珍重です。ソ連製の録音テープを再生したことがありますが、見た目磁気テープもリーダーテープも全く異質の物でした。


AEG MagnetophonI

 テープレコーダーはアナログ時代の舞台音響を支えた主要品目です。録音・再生はもとより音楽編集にも欠かせないものでした。

 2000年以前に開設した劇場では備えるのが普通でした。DENONSONYOTARIがその主たるところです。3モーター機は重量が20〜30kg以上あり、複数台を持ち回る旅公演は大変でした。

 著者は1931年生まれ。磁気録音の草分けの一人で、日本電気音響 (DENON)、日本楽器製造 (YAMAHA) を経て、東京電気音響 (TEAC) の設立に加担。後にフォスター電機に転じます。磁気録音関係の標準化にも寄与し、EIAJ、JIS、AES、IECなどの委員・委員長などを歴任しました。


TEAC A-3440
書名
テープ録音機物語
著者
阿部美春

製作

誠分堂新光社
発行日
2016年6月11日
判型
B5判 516頁
定価
12,500円 (税別)
 未完の目次をみると、dbxノイズリダクション/エルカセット/業務用アナログ/業務用デジタル/マルチトラックと続きます。図書コードがなく自費出版のようです。惜しむらくは索引がないことです。

 著者には本稿に先立つ「国産円盤録音機物語」という連載 (JASジャーナル) もあります。
(ステージ・サウンド・ジャーナル 2016年9月号より)